母乳研究

2015年からは雪印ビーンスターク（株）と合同で、第3回となる全国的な母乳調査を開始しました。今回の調査では、母親の生活習慣と母乳成分が乳児に与える影響を明らかにするため、1200組の健康な母子を対象に満5歳まで定期的な追跡調査を行っております。

第3回全国母乳調査では、母乳の成分分析のみならず、母親の食事・生活実態、そして乳児の発達などを調査しています。

当社の前身である雪印乳業は、1960年に日本で初めてとなる全国規模での母乳成分に関する総合的な調査を実施しました。この調査では619名の方から貴重な母乳をご提供いただき、26項目にわたってその成分を詳細に分析しました。その結果、母乳中のたんぱく質の量とその組成についてや、牛乳と日本人の母乳成分の違いなど、多くの発見がなされ、その成果は日本の赤ちゃんのために粉ミルクの改良に活かされました。
粉ミルクを母乳に近づける研究は、母乳に含まれている成分の分析だけではなく、それぞれの成分の働きについても進められました。当時当社が注目したのが、いまではおなじみとなった「オリゴ糖」や「タウリン」といった成分です。母乳を飲んでいる赤ちゃんのおなかの中にはビフィズス菌が多く存在し、この腸内環境を整えてくれるビフィズス菌を増やす働きをするのがオリゴ糖だということが発見されました。一方、赤ちゃんの脳や視力の発達、脂肪の消化に大切なタウリンが、母乳中には粉ミルクの10倍も含まれていることが発見されました。その重要性を明らかにし、世界で初めて当社が粉ミルクに配合したこれらの成分が、今日では粉ミルクの世界標準となっています。

第1回全国母乳調査から約30年がたち、食生活にも大きな変化があったことから、第2回全国母乳調査が実施されました。第2回目の調査は、北海道から沖縄までという全国規模で、さらに夏と冬の2回に分けて実施されました。前回から4倍近くとなる2,434名の方から母乳をご提供いただき、当時の最新テクノロジーを使用して飛躍的に向上した分析手法により、約180項目にわたって精度の高い分析が行われました。
この調査によって、30年前と比べお母さんたちのたんぱく質摂取量が増加し、母乳中のたんぱく質濃度も大幅に増えていることがわかったほか、微量な成分の機能についてもたくさんのことが明らかになりました。例えば、病原性大腸菌O-157やインフルエンザウイルスなどから赤ちゃんを守ってくれる「ガングリオシド（シアル酸）」、脳の発達に大切なDHAを増やすなど赤ちゃんの成長に欠かせない「ヌクレオチド」、腸が未熟な赤ちゃんの消化管機能を発達させ、アレルゲンが体内に侵入するのを防いでくれる「リボ核酸」や「ポリアミン」など、赤ちゃんの発育を支える母乳の神秘的な力が明らかとなり、これらの成分をいち早く粉ミルクに配合してきました。