チャレンジChallenge
「北海道磯分内工場バター新棟」
安定的立上げへの挑戦
国産乳製品の生産を安定させなくては。
約200億円を投資した一大プロジェクトに、
バターや粉乳のプロフェッショナルが
名を連ねました。
ハードワークを
楽しく乗り切る「場」づくりで、
メンバーの不安を払拭した。
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野月
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工場に転勤する以前の生産部時代から、磯分内新棟のライン構成や生産能力の組み立てを行っていたので、立上げ方法はイメージできていました。製造関連の責任者として最初に行ったのは、各セクションのリーダーとメンバーの人選ならびに配置でした。人選の条件は導入設備への精通度、そしてプロジェクトを通じ成長が期待できる者としました。
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筒渕
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生乳の受入れからバターや生クリーム、脱脂粉乳や脱脂濃縮乳の製造、製品倉庫から工務にいたるまで、工場全体を効率化するプロジェクトと知り、これまで叶わなかった夢の実現にわくわくしました。
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野月
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私の場合、自分が組み立てたものが数百億円という巨額プロジェクトとなり動き出したため、武者震いしました(笑)。
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杉本
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それまで限られた予算をやり繰りしながら品質や安全の維持に必死でしたので、待望の新棟建設に製造現場は大喜びでした。
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薄田
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若くしてメンバーに選ばれたことはとても嬉しかったです。しかし任されたのは、バター充填セクションのリーダーという大役でした。充填の知識や経験はありましたが、何ラインにもおよぶ設備の立上げの経験はありません。正直、自分で良いだろうかと不安で一杯でした。
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野月
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その頃、このプロジェクトに対して漠然とした不安を抱く者は少なからずいました。やがてその不安が、プロジェクト全体の進行の妨げになるかもしれないとも感じていました。
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杉本
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確かに複雑な心境でした。新棟を建てるにあたっては、これまで通り生産は続けながら、新しい設備機器を並行して立上げることとなり、バター職場主任の私には、プロジェクトメンバーが抜けたあとの生産の維持を求められたからです。戦力は不足しても、負けない工夫で立ち向かえということです。どうすればいいかと悩んだ末、一つの考えに行き着きました。それは、「一人でできることは限られる。ましてやプロジェクトなんだから、メンバーの総意で最適解を見つけよう」と。
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筒渕
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不安などなかった、と言えば嘘になります。でもそんなこと考えている余裕すらありませんでした。なにしろ立上げに必要だからと、粉乳職場のコアメンバーがほぼ抜けてしまったんですから…とにかくなんとしても戦力不足を乗り切らなければなりませんでした。
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薄田
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自分の場合は、不安は仕事の常だからと言い聞かせ、出来る事を精一杯やることに努めました。良い意味で開き直れたことは収穫でした。とにかく課題を洗い出し、一つずつ潰し、生産開始に向かう事だけを考えました。
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野月
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私は作り手の楽しさややりがいが、商品の味に伝わるという信念があります。現場が辛いとか、厳しいと感じていては、本当の美味しさを伝えることはできないと。新棟建設にも通じるものがありました。仕事が辛いからと嫌々こなしているようでは、安全で安心していただける商品を製造する工場は作れません。そこで私はハードワークであっても楽しく乗りきる「場」が必要だと考えました。メンバーは一様ではなく、個性も考え方もさまざまです。でもきっとその人に最適な「場」があるはずです。活躍して輝ける「場」です。一人ひとりにその「場」を発見してあげることで、楽しくてやりがいのある職場が生まれます。
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筒渕
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輝ける「場」で充実した毎日をおくりながら、私はある言葉を噛みしめていました。 “機能美に優れた工業製品が美しく見えるように、使いやすく整頓されたプラントにも美しさを感じる” という一文です。私はそこに、ものづくりの真理のようなものを感じていました。美味しい雪印メグミルクの商品は、磯分内の美しい工場で作られる。その美しい工場は、製造という「場」で働く者の、隅々にまで行き届いた配慮と注意が作り出す。美しさも美味しさも、人が作るほかないということです。
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野月
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「場」づくりを終えたことで、メンバーの仕事ぶりに勢いが出てきました。険しい道のりを一緒に歩んでいく意気込みも伝わるようになりました。各セクションのリーダーとは、業務の進捗管理や個別の打合せを繰り返し、通常生産に滞りが生じないよう、工場全般の運営にも気を配る毎日が続きました。
深刻な戦力不足と
高まるプレッシャーを、
知恵と工夫で乗り越えた。
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杉本
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日を追うごとにプロジェクトの重みは増していきましたが、メンバーたちの仕事へのボルテージも高まっていきました。懸案だった既存棟の戦力不足は、職域の拡大や生産効率化による時間の創出で軽減されました。時間外対応で要員確保に奔走したり、できる限りを尽くしました。ただ気がかりだったのは、メンバーたちのモチベーションでした。新棟の新しい設備でも、これまで通りミスなくやっていけるんだろうかと、プレッシャーを感じ始めていたからです。
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野月
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もともと高い能力を持った人たちが多く在籍している工場ですが、慣れない設備の扱いが怖かったのでしょうね。バターも生クリームも当社の主力商品ですから、設備が変わったからといって欠品など出せないという責任感が、プレッシャーにつながったのだと思います。
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杉本
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そうでしょうね。既存棟から新棟への移行期間もありませんでしたから。そんなプレッシャーや恐れを解消してもらおうと、設備の試運転時に訓練を行えるような生産計画を練ることとしました。
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筒渕
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粉乳の現場でも要員不足は深刻な問題でした。思案の結果、若手社員の育成と多能化で事に当たることにしました。彼らの才能や活力を引き出すことができれば、生産を維持することもきっと可能になるに違いないと。また既存設備の問題を新棟に引きずらないよう、現場のメンバーからリノベーションのアイデアを募り、プロジェクトのメンバーに提言しました。
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薄田
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老朽化により設備の管理項目が増え、シビアな調整を求められる毎日でした。品質トラブルへのプレッシャーもありました。でも無責任な仕事はしない、見て見ぬふりはしない事を自分に戒めていました。バターの充填には細心の注意が必要です。ひたすら丹念にラインを見続けて不具合を発見します。体力を要しますが、プレッシャーになど負けてはいられません。