骨マガジン vol.23
宴会の席でお酒を少し飲んだだけなのに、鏡を見たら顔が赤くなっている。そういう方は結構いるのではないでしょうか。このお酒を飲むと顔が赤くなる体質の方と骨粗しょう症との関係を慶應義塾大学の研究者が明らかにしたそうです。
お酒を飲むと、アルコールを分解する過程でアセトアルデヒドと呼ばれる物質が生じます。このアセトアルデヒドは、通常は体内でさらに無毒な物質に分解されます。ところが、このアセトアルデヒドを分解する酵素(ALDH2)の活性が遺伝的に弱い方は、アセトアルデヒドが分解できずに体内に蓄積してしまいます。その結果、顔が赤くなる、頭痛がするなど、お酒による不快な症状があらわれやすくなってしまうのです。
また、近年の研究で体内にアセトアルデヒドが蓄積すると、骨を作る骨芽細胞の働きも弱まってしまうことがわかりました。実際に遺伝的にALDH2が欠損したマウスにアルコールを与えると、血中のアセトアルデヒド濃度が上昇するとともに、骨量も低くなることが明らかとなっています。さらに最新の研究では、遺伝的にALDH2の活性が弱いマウスでは、アルコールを与えなくても骨量が低くなることから、ALDH2は骨の代謝にも深く関わっていると考えられるようになっています。
そこで閉経後の女性を対象にお酒を飲んだ時に赤くなりやすい体質と骨粗しょう症の関係を調べたところ、お酒を飲むと赤くなりやすい遺伝子を保有する方は、普段の飲酒量に関係なく骨粗しょう症による大腿骨骨折を起こしやすくなることが明らかとなりました。以前より、ご家族に大腿骨骨折歴のある方は、大腿骨を骨折するリスクが高いことが知られていましたが、今回その原因の1つが明らかになったのです。
骨粗しょう症による大腿骨骨折は、骨折の中でも特に重篤で、寝たきりや要介護の要因となります。お酒を飲むと顔が赤くなってしまう体質の方は、飲酒量に関わらず、普段の食事や運動などで、骨の健康をより心がけるようにしましょう。