食の基本 ライフステージ別の食の課題と食事のポイント

ジュニア世代へのアドバイス

学童期のこの時期は、身体の発育に伴って体重増加量も多くなるため、たんぱく質は特に不足しないように気を付けましょう。
この時期から思春期にかけてカルシウムは体内に、生涯の中でも最も多く蓄積されます。10代から成人に向けての食事と運動で骨へのカルシウム蓄積を充分に増やしておくことが、成人期・高齢期の骨粗しょう症を予防する重要なポイントとなります。
また、給食のない日はカルシウムや鉄の摂取量が給食のある日より不足しがちです。特に夏場は、学校給食で出されている牛乳が、ジュースや炭酸飲料に置き換わりがちで、カルシウム不足になりやすく、加えて糖分の摂りすぎも心配されます。

学校がお休みの日も牛乳を飲もう!!

高学年になるにつれ生活が夜型になりやすく、夜遅い時間の夕食や夜食の摂取、起床時間の遅れが朝食の欠食を招きます。朝食欠食は栄養不足になりやすく、学習能力や体力面にも影響を及ぼすので、規則正しい生活リズムを作ることが大切です。

若もの世代へのアドバイス

20代のこの時期は、食生活が乱れやすく飲酒の機会も増え、健康へのケアは二の次になりがちです。
仕事中心の生活になると、外食や中食の利用増加、朝食欠食、食事時間の乱れなどにより栄養面への問題も増えてきます。ファストフード、丼物、めん類などの外食、市販の惣菜、インスタント食品などに依存した生活や、朝食欠食のある場合などは、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが不足します。
こうした栄養状態に食事時間の乱れ、運動不足やストレス過多が重なる生活が続くと、肥満や生活習慣病の素地を作ることになり、これからの健康状態に影響します。

また、若い女性の多くはやせ願望があり、野菜偏重、ダイエット食品偏重など、偏った食事をする人も少なくありません。こうした食事ではエネルギー、たんぱく質、カルシウム、鉄などが大きく不足しやすく、骨量や筋肉量の減少、貧血、ホルモンバランスの乱れなどを招きます。適正な体重を維持していくことが大切です。

中高年へのアドバイス

中高年になると、生活習慣病が表面化しやすいため、その予防が大事な時期です。
多忙な生活の中で食生活は乱れやすく、外食や中食が増えると脂質や食塩の過剰摂取や栄養の偏りが生じやすくなります。栄養バランスの乱れに運動不足やストレス過多が重なると、生活習慣病などを招きやすくなります。

従来の日本型の食事は魚類が中心だったのが、経済状況や嗜好の変化などにより肉類の摂取が増加しています。肥満や脂質異常症の割合が増える時期だけに、肉に偏った食事には注意が必要です。
一方、野菜やくだものの摂取不足がみられ、ビタミンA・Cや食物繊維の不足の一因になっています。食物繊維は排便を促進するなど生活習慣病予防効果が認められており、摂取量を上げることが望まれます。

また、高血圧の予防には、食塩の摂取を抑えるとともに、野菜類やくだものに多いカリウムの充分な摂取も大切です。
さらに、女性は40代後半から更年期を迎えるので、閉経後の骨粗しょう症予防の観点からも充分なカルシウム摂取が必要です。

50~60代のこの時期は、これまでの栄養状態がアンバランスな場合、その影響が生活習慣病などの発症となって現れてきます。
夜遅い飲食は、脂質や食塩、アルコールの摂りすぎなどに注意が必要です。女性は、更年期になると骨量減少が急激に進むため、カルシウムの摂取が特に重要です。閉経期は女性ホルモンの分泌量が減り、基礎代謝の低下も加わり、肥満、骨粗しょう症、脂質異常症などが発症しやすくなります。

生活習慣病予備軍該当者は、早めの予防が大切です。身体活動量は年齢とともに低下する傾向にあるので、食事の量と質に注意します。エネルギーや脂質、食塩の摂りすぎに注意しながら、たんぱく質やカルシウムなどはきちんと摂り、「脂質の高い主菜が多すぎないか」「毎食、野菜や海藻は摂っているか」など、日々の食生活を見直してみましょう。また、運動習慣も身に付けることが大切です。

シニア世代へのアドバイス

70代からの時期は、生活習慣病の発症・重症化の予防とともに、骨量や筋肉の減少、体力低下などを予防しましょう。
特に生活習慣病などの疾患がある場合は、合併症の予防上、エネルギーや食塩、脂質などの摂取量のコントロールが必要になります。
高齢になると味覚が鈍くなり、濃い味つけを好むようになりがちですので、高血圧予防のため、食塩摂取量をおさえ、カリウムの多い野菜や海藻、くだもの、豆類も摂りましょう。

また、男女とも骨量減少が著しく進む時期で、女性は筋力の低下による転倒などで骨折が生じ、寝たきりとなるケースもみられます。充分なカルシウムやビタミンDの摂取が重要です。カルシウムの供給源として、牛乳・乳製品や大豆製品、緑黄色野菜などを積極的に摂りましょう。

身体機能が低下すると、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)機能や消化能力の低下などからたんぱく質やエネルギーが不足しがちです。たんぱく質はしっかり摂り、動物性たんぱく質(脂肪の少ない部位の肉類や魚介類、卵、牛乳・乳製品)と大豆製品が不足しないようにしましょう。
食事が一度にたくさん摂れない場合は、回数を多くして分けて摂りましょう。牛乳・乳製品、卵、豆乳などの大豆製品、芋、くだものなどは間食に用いやすい食材です。

妊産婦へのアドバイス

<妊娠初期>

栄養バランスを考えて、食品は偏りなく意識して摂りましょう。特に鉄・カルシウムなどは不足しがちです。胎児の歯や骨の発育のためにもカルシウムが不足しないよう、牛乳・乳製品の摂取が大切です。たんぱく質は脂肪の少ない部位の肉類や魚介類、卵、牛乳・乳製品、大豆製品などをバランスよく摂り、野菜類は緑黄色野菜をはじめいろいろな種類を摂るようにします。

<妊娠中期>

後期にかけて食欲が増してくるので、適正体重維持のためにエネルギーコントロールをしましょう。
また、鉄の付加量も増えてくるので、貧血防止のため、鉄を多く含む魚介類や大豆製品、緑黄色野菜、海藻などを摂りましょう。鉄の吸収をよくする動物性のたんぱく質や、ビタミンCを多く含む野菜やくだものなどといっしょに摂ると効果的です。

<妊娠後期>

胎児が急激に成長する時期で、胃が押し上げられるため、1回に食べられる量が減ります。1日を4~5回食にして、必要な栄養を補給しましょう。
また、血流が悪くなりむくみが生じやすいため、濃い味つけや水分の摂りすぎに注意します。塩分を多く含む加工食品やインスタント食品などは控えましょう。
また、胎児の成長とともに腸が圧迫されて便秘がちになるので、食物繊維の多い野菜や芋、海藻やきのこ、くだもの、納豆、腸内環境を整える牛乳やヨーグルトなども積極的に摂りましょう。

<授乳期>

妊娠期に増えた体重は出産後に徐々に戻し、授乳に必要な栄養素をバランスよく摂るようにしましょう。鉄などのミネラルは出産時の出血などによって失われやすく、母乳の鉄不足は乳児の鉄不足となります。また、カルシウムが不足すると母体の骨量低下を招くなど、母体の健康も低下させます。
また、エネルギー量が過剰にならないよう、脂肪や砂糖の多い食品は控えます。乳汁分泌を促進するには充分な水分摂取も必要ですので、汁物料理、牛乳などを組み入れるようにしましょう。

スポーツをする人へのアドバイス

運動により消費エネルギーは増加するので、空腹感を満たすだけの簡便な食事では必要な栄養素が不足してきます。エネルギー源として、糖質とたんぱく質の十分な補給が必要です。ごはんやパン、めん類などの糖質は体内への吸収がゆっくりなので、お腹のもちがよいです。たんぱく質が不足した状態で運動を続けると、貧血をおこすことがあるので、主食を含めて食事全体のバランスが大切です。また、エネルギー代謝に必要なビタミンB群、カルシウムや鉄などの確保も大事です。

また、定期的な水分補給も重要です。通常の発汗程度なら水だけでもよいのですが、多量の発汗がある場合は、発汗で失われるミネラル類を含むスポーツ飲料などが適しています。また、糖質の多い清涼飲料水を摂りすぎないように気を付けましょう。

参考:「ライフステージ別 食の課題とアドバイス」(女子栄養大学出版部)2014年10月