サステナビリティ

TCFDへの取組み

気候変動問題はグローバル社会の最重要課題の一つであり、「食の持続性」の実現に向け、雪印メグミルクの事業の前提条件となる重要課題として取り組む必要があります。雪印メグミルクでは2022年9月よりTCFDに基づく非財務情報の開示を開始しました。

TCFD提言への賛同、TCFDコンソーシアムへの加盟

雪印メグミルク(株)は2021年10月に、TCFD※1提言への賛同を表明し、TCFDコンソーシアム※2に加盟しました。雪印メグミルクグループはTCFDの提言に基づき、気候変動が事業に与えるリスクおよび機会を評価し、「ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標」の4つの観点から情報開示を進めています。

※1 G20 財務大臣および中央銀行総裁の意向を受け、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の略

※2 TCFDに賛同した企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断に繋げるための取組みについて議論が行われる場

TCFDの提言に基づく4つの観点からの情報開示

ガバナンス

  • 雪印メグミルクグループは企業理念の原点である「健土健民」という「存在意義・志」を掲げ、酪農乳業を原点として広がるバリューチェーンのすべてで、社会課題を解決する「いつの時代にも社会から必要とされる会社」を目指し、サステナビリティ経営を推進しています。
  • 雪印メグミルク(株)では、重要テーマごとに脱炭素、脱プラ、人権の3つの分科会を設け、継続的に対応策を協議しています。サステナビリティ推進部会では、各分科会からの報告を受け、雪印メグミルク(株)の気候変動やサステナビリティに関わる全般の内容を協議しています。グループサステナビリティ委員会ではグループ全体のKPI進捗管理とサステナビリティ経営の目標設定を行っています。これらの内容は取締役会へ報告し、迅速な意思決定や経営戦略につなげています。
責任者 頻度 協議内容
取締役会 グループサステナビリティ委員会およびサステナビリティ推進部会の報告を受け意思決定を実施
グループサステナビリティ委員会 社長 2回/年 気候変動対応を含めたグループ全体のサステナビリティ経営の目標設定と進捗管理を実施
サステナビリティ推進部会 サステナビリティ担当役員 4回/年 気候変動対応を含めたサステナビリティ経営の施策内容の協議を実施
 脱炭素分科会 生産・生産技術
担当役員
1回/月 温室効果ガス削減に関する施策立案
 脱プラ分科会 研究開発担当役員 1回/月 プラスチック削減に関する施策立案
 人権分科会 サステナビリティ担当役員 1回/月 人権課題に関する施策立案

戦略

  • 雪印メグミルク(株)の主要事業(売上の8割強)である「乳製品事業」と「市乳事業」を対象に、移行リスクと物理的リスクを抽出し、IPCC※1やIEA※2などの情報を基に2つのシナリオ(1.5℃上昇シナリオ、4℃上昇シナリオ)を設定し、2030年と2050年を時間軸として、事業インパクト評価を実施、対応を開始しました。

※1 国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略。人為起源による気候変化、影響、適応および緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織。

※2 国際エネルギー機関(International Energy Agency)の略。石油を中心とするエネルギーの安全保障を目的とするOECD(経済協力開発機構)の下部機関。石油消費国側の機構で、OPEC(石油輸出国機構)に対抗する目的のもの。第一次石油危機後の1974年に当時の米国務長官の提唱で設立。

リスクと事業インパクトについて

重要度の大きいリスクの影響度について2つの気温上昇シナリオ(1.5℃シナリオ、4℃シナリオ)で分析したところ、1.5℃シナリオでは、移行リスクの「炭素価格によるコスト増加」「エシカル消費の対応遅れによる需要喪失」の影響度が大きく、4℃シナリオでは物理的リスクの「平均気温上昇による生乳生産量やコストへの影響」「豪雨や洪水などの自然災害に伴う操業停止」が事業に大きく影響を及ぼす結果となりました。

<1.5℃上昇シナリオ>

気候変動への取組みが行われ、炭素排出量の低減に対応するためのコストが必要となる一方で、エシカル消費などにより持続可能な商品の需要が増え、2100年時点で産業革命以前の水準と比べて1.5℃以下に抑えられる社会

<4℃上昇シナリオ>

気候変動への取組みが行われず、従来型のサプライチェーンが継続され、異常気象や自然災害に対応するためのコストが必要となり、2100年時点で工業化前の水準と比べて4℃以上に上昇する社会

リスク項目 2050年頃における事業インパクト
分類 大分類 小分類 考察 影響度※1
1.5℃ 4℃
移行
リスク
政策と法 炭素価格 ■炭素税の導入により、工場や商品の輸送に使用される燃料に税金が課されるようになり、製造・輸送コストが増加する。また、炭素税の高い国や地域における工場での製造コストが増加し、売上原価が増加する可能性がある。
評判 消費者の嗜好(エシカル消費※2への対応など) ■消費者が自然素材の利用や包装資材リサイクリング、CO2排出などへの関心を高め、気候変動対策に積極的な企業の製品を購入するようになり、売上高の増加/減少につながる可能性がある。
物理的リスク 慢性 平均気温の上昇
  • ■平均気温の上昇によって主要な原材料である生乳の生産量が減少するため、酪農家は従来以上の暑熱対策(飼養管理、牛舎環境)が必要となり、原材料調達コストが増大する恐れがあり、結果として売上原価の増加につながる可能性がある。
  • ■平均気温の上昇による水資源不足は、大量の水が消費される原材料の供給および製造加工現場の業務に悪影響を及ぼし、水リスクの増加および規制強化による設備運営のコスト増大を生じさせ、結果として売上原価/販管費の増加につながる可能性がある。
急性 異常気象の頻発化と深刻化(豪雨、洪水など) ■気候変動がもたらす自然災害(豪雨、洪水など)は、製造拠点や物流経路に大きな被害をもたらし、操業中止や配送停止の可能性がある。また、牧草や飼料となる農作物などの生物資源の収量が減少する可能性があり、調達コストの増加につながる。更に、製造・物流設備などの復旧への費用発生やリスクの高いエリアの設備の保険料などのコストが発生する可能性がある。結果として、売上の減少、販管費の増加、損失などの発生につながる可能性がある。

※1 リスク項目欄に記載した各リスクの財務への影響を影響度別に印(大・中・小)で表しています。

※2 地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のこと。

2022年度の対応内容

リスク項目 影響 2050年影響度 対応
1.5℃ 4℃
炭素価格 炭素税の導入による
製造・輸送コストおよび売上原価の増加
■CO2排出量削減を目的としたボイラLNG化とメタン発酵設備を導入しました(雪印メグミルク(株)大樹工場)。
■再生可能エネルギー利用拡大に向けた太陽光発電設備導入を決定しました(海老名工場、阿見工場、京都工場)。
■再生可能電力の導入を検討しました(雪印メグミルク(株)川越工場)。
■2030年度にCO2排出量を2013年度比50%に削減するため、年度毎の数値目標をロードマップとして定め、中間地点である2025年度のCO2排出量目標を明確化しました。
■サステナビリティリンクローンおよびグリーンボンドによる資金調達を開始、環境に関連する設備投資を促す体制を整備しました。
■CO2排出量の数値の蓋然性を高めるため、2021年度のCO2排出量から第三者機関による検証を開始しました。
■インターナル・カーボン・プライシングの導入について検討を開始しました。
消費者意識
の変化
消費者の自然素材の
利用や包装資材
リサイクル、
CO2排出などへの関心

気候変動対策に積極的な企業の製品購入による、売上高の増加/減少
■家庭用商品に貼付するストローをバイオマスプラスチック配合品に変更しました。
■学校給食用牛乳でバイオマスプラスチック配合品ストローの提供とストローレス容器の導入を開始しました(2023年4月)。
■ヨーグルト容器の紙化やバイオマスプラスチックを配合した容器導入に向けたロードマップの策定と検討を開始しました。
■エシカル消費について、雪印メグミルク(株)消費者部会にて、消費者団体の代表者や消費者問題に関する有識者と対話を実施しました。
■プラントベースフードなど代替食品および機能付加商品の拡大を新たなKPIとして設定しました。
平均気温
の上昇
暑熱対策による
原材料調達
コストの増加

平均気温の上昇による
水資源不足
■ろ過器逆洗水回収設備を導入しました(雪印メグミルク(株)海老名工場)。
■牧草・飼料作物種子による作付面積拡大のKPIの見直しを実施しました(雪印種苗(株))。
■緑肥作物種子による作付面積拡大を新たなKPIとして設定しました(雪印種苗(株))。
■持続的酪農経営を行うための経営管理・技術的支援として、酪農総合研究所シンポジウムを開催しました。
■牛の腸管由来温室効果ガス削減対策となる実証試験を開始しました(げっぷに含まれているメタンガスの削減)。
異常気象の
頻発化と
深刻化
自然災害による製造・
物流設備への影響
■生産拠点の水リスクの再評価を実施しました。アキダクトによる評価では、リスクが高い事業所はありませんでした。用水・排水・洪水の各リスクについて独自評価を行い、排水のリスク対応として、排水処理設備の更新(八ヶ岳乳業(株)茅野工場)、洪水のリスク対応として、河川の氾濫による受変電・配電設備の被害を防止するため、簡易防液堤設備を設置しました(雪印メグミルク(株)別海工場)。
■雪印メグミルク(株)北海道内全7工場に設置している非常用発電機について、有事に備え、稼動を確認する定期訓練を実施しました。

リスク管理

  • 気候変動リスクはサステナビリティ推進部会で報告・協議され、グループサステナビリティ委員会を通じグループ全体に共有しています。また、雪印メグミルク内で定期的に開催しているリスク連絡会ではグループ全体のリスクとトラブルの管理を行い、情報の迅速な共有化を図り、対応をチェックしています。

リスクマネジメント

指標と目標

  • 抽出されたリスクに対し、KPI(重要管理指標)を設定し、その取組みを行うと共に、2023年度より新たなKPIを設定しました。
気候変動に関する主なKPIの進捗状況
項目 KPI 重要課題(マテリアリティ) 2021年度 2022年度
炭素価格 CO2排出量 2030年度50%削減(2013年度比) 18.4%削減 23.5%削減
消費者意識の変化 石油由来のプラスチック使用量(売上原単位) 2030年度25%削減(2018年度比) 2.5%削減 5.3%削減
使用する紙を100%環境に配慮した原材料に変更 87.1% 97.7%
認証パーム油 2026年度100%調達 20.4% 14.5%※1
平均気温の上昇 生産拠点の用水使用量 2030年度9%削減(2013年度比) 8.2%削減 7.6%削減※1
牧草・飼料作物種子による作付面積拡大 2030年度3%拡大(2019年度比)※2 0.2%増加 3.7%増加
異常気象の頻発化と深刻化 水リスクを確認し事業継続のリスク評価を実施(毎年) リスク評価実施 独自評価の見直し排水・洪水対策実施

※1 対象範囲を拡大
※2 2023年度から「牧草」を追加

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