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研究・開発成果の
ご紹介
Summary
健康に関する研究
「MBP」の研究
「MBP」は牛乳中の乳清に含まれる希少な機能性たんぱく質です。
「MBP」は、「牛乳にはカルシウムのほかにも骨の健康に役立つ成分が含まれているのではないか」という考えを基に1980年代後半に研究に着手し、
雪印メグミルクが発見した成分です。研究を重ね、「MBP」が健康な骨をつくり、幅広い年代の人に役立つはたらきを持つことが明らかになりました。
骨は新陳代謝を繰り返し、絶えず新しい骨と入れ替わっています。古い骨が壊される「骨吸収」をになう細胞は「破骨細胞」、新しい骨がつくられる「骨形成」をになう細胞は「骨芽細胞」と呼ばれています。「MBP」はその破骨細胞の過剰なはたらきを抑える一方、新しい骨をつくる骨芽細胞の数を増やします。
実際に「MBP」入り飲料を飲んだ試験で、骨密度を高める効果が確認されています。骨密度を高める「MBP」の効果は、健康な成人女性33名(20~50代)を対象に行われた飲用試験で「MBP」を1日40mg摂取したグループは6ヵ月後、橈骨(とうこつ=手首に近い前腕)の骨密度が平均3%増加しました。
「ガセリ菌SP株(Lactobacillus gasseri SBT2055)」の研究
1980年代に乳酸菌の整腸作用研究が盛んとなり、当社も腸内細菌の研究に本格的に着手しました。1990年代に入り、腸内に生息するガセリ菌を研究している中で、風味特性や胃酸に対する耐性がある菌株を探した結果、Lactobacillus gasseri SBT2055(以下、「ガセリ菌SP株」)を見いだしました。
この菌株の特徴は、生きて腸まで届き、生きたまま長く腸にとどまることでした。2000年に入ると、生活習慣病、免疫機能を対象にした健康機能の研究が盛んになりました。当社も新たな研究を行い、「ガセリ菌SP株」が
内臓脂肪蓄積抑制効果を持つことを見いだしました。そこで、肥満気味ではあるものの健常な成人男女に「ガセリ菌SP株」の入ったヨーグルト1日100gを連続12週間摂取してもらった結果、摂取群で内臓脂肪が有意に減少しました。また、内臓脂肪抑制のメカニズムとしては、同菌株には脂肪の吸収抑制作用があることを証明しました。この結果を受け、2015年からこの菌株を配合したヨーグルトを機能性表示食品として発売しました。その後、2018年には特定保健用食品として「ガセリ菌SP株(Lactobacillus gasseri SBT2055)の働きにより、食事とともに召し上がることで脂肪の吸収を抑え、内臓脂肪を減らすのを助けるので、肥満気味の方で内臓脂肪が気になる方の食生活の改善に役立ちます。」の表示許可を受けています。ヨーグルトでは初めて内臓脂肪を減らすのを助ける特定保健用食品として表示許可を受けました。
また、「ガセリ菌SP株」は内臓脂肪蓄積抑制作用以外にも、歯周病に対する抗炎症作用、インフルエンザウイルスに対する感染予防効果などが確認されています。
「乳酸菌ヘルベ(Lactobacillus helveticus SBT2171)」の研究
乳酸菌の健康機能に関する研究において、免疫制御機能に関するスクリーニングを行ったところ、Lactobacillus helveticus SBT2171が、他の菌株に比べて免疫細胞の増強、炎症性サイトカインの産生抑制において強い作用を持つことを見いだしました。そこで、ハウスダストやダニなどに特異的な抗体が陽性で目や鼻に不快感がある健常者を対象に、この菌株が含まれたヨーグルトを1日100g、12週間摂取してもらった結果、目や鼻の不快感の解消や低減が確認されました。この結果を受け、2020年からこの菌株を配合したヨーグルトを機能性表示食品として発売しました。ヨーグルトでは初めて「目や鼻の不快感を緩和する」機能で機能性表示食品として届出が完了した商品となります。
乳糖分解乳の開発
牛乳を飲むと、おなかがゴロゴロしてうまく摂取できない方がいます。その原因のひとつは「乳糖」で、牛乳や乳製品に広く含まれている二糖類です。
「乳糖」は小腸で作られるラクターゼ(乳糖分解酵素)によってブドウ糖とガラクトースの2つの単糖に分解されて初めて、腸壁から血液中に吸収されますが、ラクターゼが少ない人は「乳糖」を分解・吸収できないため、腸内の乳糖濃度が高くなります。すると浸透圧の関係で腸内に水分が引き寄せられ、下痢を引き起こしやすくなるのです。さらに吸収されない「乳糖」は小腸から大腸に入り、腸内細菌によって発酵されガスが発生することで、腹部膨満などの原因となります。
雪印メグミルクでは、酵素を使って乳糖を分解しつつ、乳成分のバランスを整えることで、おいしく仕上げる技術を使用しています。(特許第5514422号)
おいしさに関する研究
「おいしさ重ね製法」の開発
当社のデザート商品「Parfait Style(パフェスタイル)」には、積層化技術が使用されています。本技術は、プリンやゼリー等のチルド系デザート類において、プリンやゼリーの積層化を複雑な製造工程によらずに連続的な大量生産を可能にするものです。従来技術には、(1)下層部を充填後に冷却してゲル化させ、その後に上層部を充填する方法、(2)上下層部の比重差を利用する方法、(3)上下層部が接触した瞬間に、一方または双方が直ちにゲル化または増粘する性質を利用する方法、などが知られていました。これらの方法では、(1)設備の大規模化、(2)コスト高、(3)配合上の制約等から所望の風味や食感を実現することが難しい、などの問題点がありました。そこで、当社では、多穴ノズルや複数のノズルを用いて、上層部を充填する際に流量を周期的もしくは短時間の間に変化させることで、配合上の制約を乗り越え、下層部充填後に冷却工程を経ずに直ちに上層部を積層化でき、上下層部間に明瞭な界面を形成させる技術を開発しました。この技術を使用して製造したデザート類は2010年より発売しており、様々な組み合わせの、多くのデザート商品を提供し、お客様にご好評頂いております。
「さけるチーズ」の開発
当社の人気商品「雪印北海道100 さけるチーズ」は、チーズ研究所で誕生しました。研究所ではナチュラルチーズの「モッツァレラチーズ」を作る途中で、伸ばしてひっぱるとサキイカみたいにさけて面白い物性になることが知られていました。その点に着目し商品開発に着手、試行錯誤の結果、チーズ中のタンパク質が完全には分解されない状態で、伸ばして冷やす工程によって、きれいにさける繊維状の組織が作られることを見いだし、商品開発に成功しました。1980年の発売当初は「ストリングチーズ」という名前で発売され、プレーン、スモーク味の2種類でした。その後、現在の「さけるチーズ」という名前に変わり、バラエティに富んだ風味の商品を次々と開発してきました。お客様に「シコシコ、キュッキュ!」という食感のみならず、様々な風味を楽しんで頂いています。
濃厚な風味なチーズの開発
ゴーダチーズの濃厚な風味は、使用している乳酸菌スターターによって大きく変わります。雪印メグミルクでは、保有している乳酸菌、約3000株をスクリーニングし、チーズの熟成中に芳醇な風味を醸し出す「ヘルベティカス菌株(Lactobacillus helveticus SBT2171株)」を発見しました。
このヘルベティカス菌株が産生する酵素により「こく」と「うまみ」に関係するアミノ酸が、当社通常原料チーズの約3倍に増加することが確認されました。
とろけるチーズの開発
1987年の発売直後から大ヒットとなった、加熱するととろけて糸を引くスライスチーズです。現在では様々なメーカーから市販されていますが、当社の前身である雪印乳業(株)が日本で最初に製造販売しました。加熱によって伸びるナチュラルチーズの特徴を活かしながら、とろける食感とするために、原料となるナチュラルチーズの種類と熟度、配合を最適化し、チーズを溶解する工程の研究を重ね、保存性が高い(賞味期限が長い)プロセスチーズでも加熱するととろけて糸を引く物性を実現しました。
こんがり焼ける チーズの開発
焼いたときに焦げ目がつく、とろけるスライスです。この商品は、原料チーズの配合で成分・熟度を調整し、焦げ目がつくようにミルク由来の糖質を配合し、さらに乳化を最適にコントロールする技術を開発することにより実現しました。また、トースターによって焼き加減にばらつきがあることも踏まえ、ほとんどの機種で均一に焼き色がつくように1000枚を超えるトーストを焼いて商品を完成させています。
「おいしさキープ製法」の開発
牛乳の殺菌工程の風味変化を最小限とするために「おいしさキープ製法」を開発し、光による風味劣化を防ぐために「おいしさキープパック」(遮光性容器)を開発しました。
環境負荷を低減する研究
プラスチック使用量の削減
これまで、「恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト ドリンクタイプ」、「ナチュレ 恵 megumi フルーツヨーグルト」などのヨーグルト容器、「ネオソフト」などのマーガリン容器のプラスチック容器の軽量化に取り組み、以前の強度を保つための容器形状を開発してプラスチック使用量を削減して参りました。
賞味期限を延長する技術
食品ロスを減らす方法として、商品の賞味期限を延長することは有力な手段のひとつです。しかし、乳・乳製品は栄養に富んでいるため、商品を腐敗菌から守り、品質を維持するためには様々な工夫が必要です。
牛乳・乳飲料などに使用されている殺菌(滅菌)技術、脱脂粉乳・ホエイ粉などに用いられている乾燥技術に加えて、pH制御、酸素除去、温度制御、風味制御などの技術と容器包装技術を駆使し、各商品に最適な組み合わせを開発して賞味期限を延長しています。