世界のバターいろいろ
ひとくちにバターといっても、日本で一般に知られているようなものばかりではありません。それぞれの国柄や食生活の中で、さまざまな形でバターは人々の暮らしにとけこんでいます。
牛大国、インドのギー
世界でもっとも牛がたくさんいる国は? 答えはインドです。インドでは牛は神聖な生き物として大切にされ、とても身近な存在。牛の他に、水牛もたくさんいます。そして、その牛や水牛たちから作られる乳製品のおよそ半分が「ギー」。ギーはマカーンと呼ばれる発酵バターを煮て溶かし、沈殿物を取り除いたバターオイルです。ギーは乳脂肪のみからなり、日持ちがし、インドのどの家庭でも食用の油として、カレーやチャパティをはじめ毎日のように利用される、とてもポピュラーなものなのです。また、ギーから作ったクリームは、天然の保湿クリームとして薬用にも使われているそうです。
バター茶とバターの灯り
ヒマラヤ山脈のふもとブータン王国にも、興味深いバター文化があります。その一つがバター茶。ブータンではバターは「マー」と呼ばれ、欠かせない食材となっていますが、このバターを煮出したお茶と一緒に特殊な容器に入れ、塩も加えて棒で撹拌(かくはん)しバター茶を作ります。ほんのりと塩味がきいたスープ感覚のお茶。バターの滋味をたっぷり含んで体も温まります。また、チベット仏教が盛んなこの国の寺院では、バターを寺の灯明の油として利用しています。寺院の中に入ると、バターを燃やす独特の匂いに包まれるといいます。こうした風習は他のチベット仏教の地域にも見られます。
大草原の黄色い油
国土は日本の4倍。大草原に暮らすモンゴルの遊牧民は、実に多様な乳製品を作ることで知られています。ミルクも牛に限らず、馬や羊、ヤギ、ラクダ、ヤクと家畜の乳ならなんでもござれ。モンゴルでは、黄色い油を意味する「シャル・トス」と呼ばれるバターオイルが作られます。シャル・トスは、牛のミルクを鍋で煮て、表面に溜まった脂肪を取り出したウルムと呼ばれるクリームや、火にかけずに静置して脂肪分を分離させたズーヒーというクリームを加熱精製して作られます。遊牧民たちの朝は乳茶ではじまります。乳茶は煮出したお茶に、ミルクと塩を入れたもの。これに煎った粟やバターも加えます。日本の味噌汁のような、モンゴルの我が家の味です。
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