フルコースのデザートに、チーズ!?
パリ旅行で訪れたレストランで、フランス料理のフルコース。メインディッシュをいただいて、お腹も心も満たされて残すはデザート……と運ばれてきたのは、チーズのワゴン!?そう、フランス料理では、メインとデザートの間にフロマージュと呼ばれるチーズが出されるのが正式とされるのです。このチーズはメインディッシュの付け合わせというよりは、あくまでも“一番目のデザート”。カルヴァドスやシェリー、ポートワインなどの、甘めの食後酒とともにいただくのが一般的です。
チーズをフォークでパクリ、というのは無粋とされ、どのレストランでも大概パンかクラッカーが添えられていますので、その上にのせていただきましょう。ドライフルーツやジャムと一緒にいただけば、一層デザート色の強い“マリアージュ”を楽しむことができます。
チーズのサーブ方法ですが、高級店ではワゴンに銀のトレイが二段に積まれ、美しく盛られた何種類ものチーズから好みのものを選ぶという、優雅なひととき。庶民的なレストランだと、大皿にチーズの盛り合わせがどーんとやってきて……というスタイルになりますが、いずれも好みのチーズを好きなだけいただけるというのは、フルコースでの共通のサービスです。
日本のフレンチレストランでは、このチーズサービスが別料金であるが多く、お会計で明細を見て驚くフランス人も多いとか。日本で本場のフランスチーズの食べ放題はさすがに無理だと理解しつつも、“フロマージュ・タイム”を楽しみにレストランを訪れた方にとっては、夢から覚めた気分になるのでしょうね。
かつてフランスで人気のあったコメディアン・コルーシュが、『ハムレット』の有名なセリフになぞらえて、チーズにまつわるこんなジョークを遺しています。
『人生、決断を迫られるときがある。チーズにするか、デザートにするか』――。フランスのレストランでも、安い料金のコースなどでは、食後はチーズかデザートのいずれかの選択式になることがあるのです。チーズとともに残りのワインを楽しむか、はたまたコーヒーとデザートで締めくくるか。「生きるべきか、死ぬべきか」と苦悩したハムレット同様に、人生の大きな決断を迫られる理由がチーズというのも、なんともフランスらしいエピソードです。
Text:Akiko.T
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