ヴァランセ
ヴァランセは、独特な四角錘というユニークな形をしています。この形には逸話が残されていて、元々のヴァランセはピラミッドの形をしていたものが、エジプト遠征に失敗したナポレオンの怒りを買って切り落とされたのだとも言われています。
表皮は灰をまぶしてあるため、切ったときの白い断面との対比が美しいチーズです。この灰をまぶすことで、山羊のミルクのチーズ独特の酸味をやわらげます。
熟成が進むと表皮が黒からグレーに変化し、水分が抜け引きしまり硬くなります。
1998年にAOC(原産地統制名称制度)を取得しました。
原料乳 | 山羊乳(無殺菌乳) |
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原産国・地域 | フランス |
その他の名称 | バランセ |
見た目の特徴 | ピラミッドの上部を切り取ったような形。表面は木炭粉がまぶしてある。 |
味の特徴 | さわやかな酸味でやわらかくしっとりしている。 |
熟成期間 | 最低7日間以上 |
固形分中乳脂肪 | 最低45% |
「シェーブルタイプ」の一般的な製法でミルクからカードが作られます。
底のあるピラミッド形の器にそのカードを詰めて形成、そのまま更に水切り後、取り出して逆さにし、塩と木炭の粉を混ぜたものをまぶして空気を循環させた湿度の高い室内にて熟成させます。
産地は、フランス中部のロワール川流域のヴァランセ村と、その周辺の指定地域で作られています。
ハンドリナー(ワイヤーカッター)を使うと、組織が崩れにくく、くっつきにくいため美しくカットすることが出来ます。
初心者の方には熟成が若いほうが、山羊のミルク独特の臭みが少ないのでおすすめです。
表皮がグレーかかるほど熟成すると、酸味が弱まり、コクのある濃厚な味わいが楽しめます。
レーズンの入ったパンやリンゴとの相性もぴったりです。
熟成が進んで硬くなってしまったら、皮を除いてカットして、オリーブ油に漬けたり、すりおろしてトーストやサラダにかけたり、料理に使うのもおすすめです。
相性がよいワイン
- 辛口の白ワイン
- ロゼワイン
- フルーティな赤ワイン
ピラミッドなんて見たくない。
チーズの楽しみは味や香りだけでなく、その容姿にもあると思う。太鼓のような大物から、大福みたいにこじんまりしたもの。ヒョロッとしたういろう型やひょうたんスタイルなど興味は尽きない。このヴァランセはご覧の通りちょっと半端な四角すい。山羊乳チーズ特有の酸味を和らげるために木灰がまぶしてあるが、中は輝くように白く、ややねっとりとした柔らかな口あたりだ。このチーズはフランスのほぼ真ん中、ベリー地方のヴァランセ村で作られる。この村のヴァランセ城の主はナポレオン皇帝の腹心タレーラン公。エジプト遠征に敗れ憤懣(ふんまん)やるかたない皇帝との会食時に、もともとピラミッド型だったこのチーズがだされ、皇帝の怒りは頂点に。それ以来ヴァランセの頭は切られ、今のような寸詰まりになったという。こんな逸話も肴に、キリッと冷やした白ワインと味わうのがまたいいのである。
Photo:K.Nakazato Text:S.Ishi