ヨーロッパ編 - チーズの歴史【チーズを知る・辞典】:チーズクラブ

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ヨーロッパ編

イタリア最古のチーズは王様の羊から作られた?!

ペコリーノ・ロマーノ西ヨーロッパで初めてチーズが作られたのは、イタリアだと考えられています。
その歴史は「チーズ王国」と言われるフランスよりもずっと古く、紀元前1000年頃、高度なギリシャ文明を持つエトルリア人によって海路より北イタリアのロンバルディア地方に伝えられたという説が最も有力です。そこで、牛の乳を使ったパルミジャーノ・レッジャーノゴルゴンゾーラ(ゴルゴンゾラ)などの原型にあたるチーズが作られていたようです。また、アルプスを源流とするポー川流域には水牛の乳から作るモッツァレラ(モッツアレラ)が生まれました。
イタリア南部は岩場が多く耕地が少ないため、山羊や羊の乳を主体としたチーズ作りが行われてきました。イタリア最古のチーズと言われているペコリーノ・ロマーノは羊乳から作られる超硬質チーズとして有名ですが、このチーズにはローマ創建の初代王ロムルスにまつわる伝説があります。
ロムルス王はティベル川に捨てられて川岸に漂着したところをそこに現れた狼の乳を飲んで助かりました。その後、羊飼いの夫婦に拾われて密かに育てられたと言われていますが、その話を裏付けるかのように、ローマの博物館には乳を飲ます狼の銅像があるとか。その羊飼いの夫婦に育てられている頃、自ら飼っていた羊の乳から作ったチーズが今のペコリーノ・ロマーノであると伝えられているのです。

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世界一のチーズ王国のはじまり

西ヨーロッパで、イタリアに次いでチーズの歴史が古いのはフランスです。
フランスのチーズの歴史は、ローマ軍がアルプスを越えてガリア(現在のスイス・ベルギー・フランスの大部分)を征服したことから始まりました。ローマは征服した地域にローマ文化を導入することに力を入れたため、チーズやワインを作る技術もガリア人に伝授したと考えられています。

ロックフォールフランスで最も歴史の古いチーズはロックフォールカンタルと言われていますが、どちらも約2000年の歴史があります。それは、古代ローマの博物学者プリニゥスが彼の書いた「博物誌」第11章の中で、これら2つのチーズについて高く評価しているということからも伺えます。ロックフォールについては、中世に入るとさらに「チーズの王様」と呼ばれるほど有名になりました。
こうして考えてみると、山岳地帯と豊かな平野を持つ、フランスの独自の地形と風土が世界一バラエティ豊かなチーズを持つチーズ王国を生み出したと言えるでしょう。

→フランスのチーズについて詳しく知りたい方は 世界のチーズ フランスへ

主婦もチーズ作りを行っていた!

主婦もチーズ作りを行っていた今から1世紀ほど前まで、ヨーロッパの国々においてチーズ作りは主婦の重要な仕事のひとつと考えられていました。エメンタールのような大型のチーズ作りは男性が行っていましたが、屋内でできる小型のチーズ作りは女性に適していたようです。例えば、アムステルダムの「チーズ博物館」に展示されている、チーズ作りに使う木製プレッサーは、農家の娘の嫁入り道具として実際に使用されていたものです。
他にも、フランスのチーズの中でもひときわ有名なカマンベールを作ったのはノルマンディ地方のカマンベール村の主婦だったといった話や、世界3大青カビチーズのひとつ、イギリス産のスチルトンやデンマークで最も古いチーズであるハバーティも農家の主婦が作り出したチーズであることからも、チーズづくりにおける主婦の実力が伺えます。
このように数千年の歴史を持つチーズは、ヨーロッパ各地の庶民たちの手によって次々と生み出され、長い間伝統的な製法が守られてきました。ヨーロッパの人々にとって、チーズはまさに生活に欠くことのできない存在と言えます。