牧場名 | : | 長谷川牧場 |
---|---|---|
所在地 | : | 神奈川県茅ヶ崎市 |
開設 | : | 昭和16年 |
規模 | : | 年間出荷乳量 平成30年度 273t |
飼料畑 | : | 無 |
牛の頭数 | : | 39頭(経産牛27頭、未経産牛12頭、育成牛8頭) |
牛舎 | : | 対尻式繋ぎ飼い牛舎 |
(2019年10月)
牧場名 | : | 長谷川牧場 |
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所在地 | : | 神奈川県茅ヶ崎市 |
開設 | : | 昭和16年 |
規模 | : | 年間出荷乳量 平成30年度 273t |
飼料畑 | : | 無 |
牛の頭数 | : | 39頭(経産牛27頭、未経産牛12頭、育成牛8頭) |
牛舎 | : | 対尻式繋ぎ飼い牛舎 |
(2019年10月)
大消費地域でもある神奈川県湘南の地で、酪農経営を営む長谷川牧場は、毎年共進会で上位入賞するスーパーカウがいる牧場です。
長谷川牧場の開設は昭和16年(1941年)のこと。神奈川県藤沢市の辻堂新町で、勇輔さんの曾祖父が養鶏を営んでおり、育成牛を1頭(肥育専門)飼い始めたのがはじまりでした。
祖父の代になり、昭和23年(1948年)から酪農も始めます。昭和40年(1965年)、に牛が14頭になったので、酪農専業に切り替えました。
そして昭和53年(1978年)に、勇輔さんのお父様が経営を引き継ぎます。当時の長谷川牧場は、東海道線辻堂駅から徒歩10分という立地。昭和40年代はまだ畑が広がり住宅もまばらな場所でしたが、バブル期には、マンションや新興住宅も立ち並び急激に都市化していきます。
周りをマンションや住宅に囲まれる中、牛の臭いや泣き声が住民に迷惑をかけるのではないかと気をつかいながらの牧場経営を余儀なくされました。牛がお産の時に鳴くので、口を縛った時もあったとか。
辻堂での牧場経営は、都市化による環境変化の波の中で、糞尿処理や騒音など環境保全面で生き詰まりを感じるようになります。
さらに、地価の高騰で、固定資産税が上がり、経営に重大な影響を与えるようになります。
幸いにして、所有していた田んぼが用水池の代替で、辻堂から車で10分程度離れた山の中腹に大きな土地を確保していたこともあり、平成18年(2006年)にこの地へ牧場を移転します。
勇輔さんは「小学校までは牛にまったく興味がなかった」と言います。しかし中学校1年生の秋、お父様が岡山で開催された全日本ホルスタイン共進会*に牛を出品する際に、学校を1週間休学してついて行ってからは考えが変わりました。周りの人たちから口々に「お前のところの牛はすごい」と言われて、あらためて酪農の魅力に気づかされたのだそうです。それからは、お父様のやり方を見よう見まねで覚え、牛を育てる日々。中学校2年生の春から、自分が育てた牛で共進会に参加するようになりました。
*「ホルスタイン共進会」という乳牛ホルスタインの改良を目的とした品評会があります。全国大会は5年に一度開かれますが、毎年、各地で地区の大会が開かれています。
その後、勇輔さんは酪農が学べる高校、短大へと進学し、酪農についての情熱を持った同級生たちにさらなる刺激を受けたこともあり、いずれはお父様の後を継ぎたいという思いを強くします。そして短大卒業後に雪印種苗鰍ノ入社し、3年間を北海道の帯広で過ごした後、22歳の時に長谷川牧場に帰ってきました。1年後には完全に経営を引き継ぎ、1人で牧場を経営するようになります。
しかし最初の数年は、牛の管理の難しさに直面し、どん底の状態だったとのこと。それでも勇輔さんは、お父様に頼ることなく、なんとか自分の力で乗り切りました。
勇輔さんは、「都市型酪農のメリットのひとつは、牛糞から作る肥料が売れること」と話します。周囲に家庭菜園を作る人が多く、質の良い肥料ならば飛ぶように売れるのだそうです。2年前に藤沢市のたい肥センターが閉鎖されたのをきっかけに、自らの牧場内にたい肥舎を建設。日量1トン以上の肥料を生産し、牧場の収益に大きく貢献しているそうです。
「本当は規模の拡大もしたいし、ロボット牛舎にして省力化もしたい」と言う勇輔さん。ただ一方で、いまの牧場の周囲に購入できる土地がないという現実も。
そうした状況の中、現在の勇輔さんは、牧場を続けながら、牛のビタミン剤を販売する企業に社員として勤務しています。酪農の知識と経験を活かせる仕事ということで選んだそうですが、もちろんその企業には、牧場も続けながら勤務することを理解してもらっているとのこと。「営業職で、成績をきちんと出していれば時間はある程度自由に使えるので、両立できています」という勇輔さん。牧場の方は、元酪農家の従業員に週3日だけ来てもらっています。
二足のわらじで頑張るという新たなスタイルで、長谷川牧場の歴史をつないでいる勇輔さん。そこまでできるのは「やっぱり牛が好き」という思いがあるからだそうです。
勇輔さんが酪農に魅力を感じるきっかけになった共進会。長谷川牧場では、平成30年(2018年)に関東大会において2歳シニアクラスで2位を獲得。平成31年(2019年)には、神奈川県ブラック&ホワイトショーで経産グランドチャンピオンのほか、2部、2歳シニアクラス、3歳ジュニアクラスでもチャンピオンを獲得しました。現在は2020年宮崎で開催される全日本ホルスタイン共進会に向け調整中です。
共進会で受賞する美しい牛を育てられる理由として、「人の倍は頭数を育てて経験を積もう」という気持ちでやってきたからだ、と勇輔さんは言います。とにかく一頭一頭ていねいな管理を行うこと、事故や病気がないかいつも気を配ることなど、基本に忠実に日々の管理品質のベースアップを図ることが大切なのだそうです。
これからも共進会には参加し続けたいと語る勇輔さん。受賞する喜びはもちろんですが、他の酪農家の方と触れ合う中で得る知識や、人と人とのつながりなどが貴重な財産になっていると言います。
中学生のころ共進会をきっかけに牛が好きになり、酪農に魅力を感じるようになったという勇輔さん。世話をしながら牛を見つめるまなざしからは、酪農にかける強い思いが伝わってきました。時代や状況に合わせて柔軟にスタイルを変えて続いてきた長谷川牧場の伝統が、勇輔さんにしっかりと受け継がれていると感じました。
2019年10月
2009年にお父様から牧場経営を引き継ぎ、藤沢市乳牛改良同志会の会長を務める長谷川勇輔さん(32)に、都市近郊で営む酪農家ならではのお話を伺いました。