雪印乳業株式会社
雪印乳業株式会社
生産者の方々との対話会
第十四回生産者の方々との対話会(3月15日熊本県熊本市にて)
2003年3月15日、熊本県熊本市JA熊本市本店の会議室をお借りして、生産者の方々との対話会を実施しました。対話会には生産者の方々の窓口を引き受けてくださった村上さんを始めとする果樹など農業を営む方、酪農を営む方、JA熊本市女性部の方、雪印100株運動に参加されている消費者の方など23名にご参加いただきました。雪印側は九州統括支店、パブリックコミュニケーション室等の5人が参加しました。

【牧場見学】
対話会の前には、熊本市内の酪農家の富田牧場さんにお邪魔し、牛舎や搾乳をするミルキングパーラーを見学させていただきながら短い時間でしたがこんなお話を伺いました。
周りでは、酪農をされる方はどんどん減っています。何よりも牛の体調を最優先に考え、良いミルクが出るように清潔で美味しい水を準備することはもちろん、汚水処理や搾乳に関しても新しい設備を導入したり、また経営者として一緒に働く従業員や家族の体調に配慮したりと、苦労と高い出費が絶えない困難な経営に直面して酪農を辞めてしまう方が多いです。
現在牛舎では、きれいに区分けされたベッドに牛が一頭ずつ眠ったりくつろいだりしていますが、そのベッドを作ってから牛たちにそこで眠るように理解させるまでは数年の苦労がありました。
乳価は安く、牛の体調管理や設備への投資はお金がかかり、本当ならば数百頭の牛を飼ってたくさんの乳を出さなければいつまでも厳しい経営です。(現実は80頭くらいの牛を飼っています。)
一頭の雌牛は3回から4回お産をします。牛の精子は売買されていて、良い種牛では一頭7千〜8千円で売られていますが、私のところは2千〜3千円のものを購入しています。
牛乳が水よりも安く売っているのは何故なのかと疑問に思います。
写真雪印の事件、口蹄疫、狂牛病と予期せぬ事態に見舞われて将来に対する不安を感じていながら今も酪農を続けています。「乳」全体のイメージアップのためにも雪印を応援しています。
【対話会】
村上さんの進行のもとで自己紹介のあと、雪印側から分社化による経営形態の変化や、雪印乳業が1月以降、バター、チーズ等乳製品専門会社になること、また雪印のこの春の新商品について、特徴やこだわった点などについてご説明しました。続いて参加された方々からは、食の不安についての生産者としての思い、生き物を育んでいることについて、食のリスクについて、消費者の方々に伝えたいこと、そして、今後の雪印への期待のお言葉などを頂戴しました。


対話会にご協力ご出席いただきました皆さまに厚く御礼申し上げます。

【生産者の方々からご意見・ご提言】
生産者としてのご意見 ・ 雪印乳業へのご提言
今まで積み上げたものがどれだけあっても、今回のようなことが一度あれば、もう何も信じなくなります。何を信じればいいのかとても注意して食品を見るようになりました。
研修や視察を兼ねて工場見学をしたい。生産者・消費者に限らず、私たちは何も知らずに買って食べていますけど、例えばチーズひとつ見ても、輸入しているチーズがどのくらいの割合なのかわからない。100%国内原料のチーズなのかそうではないのか、国内で作れないものもあるとか、分からないことが多いです。
例えば工場見学は当日でも連絡が入ったらすぐに見学を受け入れられる体制というのは無理なのですか?予約してから、というとその時間が消費者に疑問を抱かせるのではないですか?
農産物をつくること・ものをつくることは、自分の生き方を表現できる唯一の職業だと、自分では思っています。言葉ではなくてそれを食べた時とか、私の場合は畳なので部屋に敷いた時とか、そんな時に気持ちが伝わるようにものをつくれたらいいなと思いながらつくっています。
自分の経験から言えば、家の近くに直売所があってそこで野菜を買うのですが、そういう気持ちが伝わる瞬間があるからその野菜を買ったりします。「自然に沿った、自然に近い、自然を利用した、それ故にたまに失敗もするけれどもそうしてつくりました。」というのが自分たちのこだわりです。去年、雪印の前の社長が“反芻”という言葉をよく話されていたのが印象に残っていて、常に自分たちもそれを気に留めて、何をするにも「これでいいのだろうか」と考えるようにしています。仕事をする中でも常に思い出して「よく噛み砕く」というか見直して考えるよう心掛けています。
現在世の中で言われているようなことは、食べる人間とつくる人間の距離が離れてきたから起こってきた問題だと思います。メーカーである雪印には、その距離を縮めることをしていただきたいと思います。
つくり手は心を込めて本当においしいものを食べてもらいたいと思ってものをつくり、情報を発信していくのですが、消費者のところに届くまでの過程でいろいろな役割の方を介していきます。
スーパーの店頭では、生産や物流に関わる人の顔が見えるというような情報が書かれているところがあるけれど、何もないところでは分からないのが現状です。企業の中で、これをすぐに何かの形にするのは難しいと思いますが、この気持ちを十分に伝えていって欲しいと思います。
企業倫理委員会などのチェック機能をもつ立場に、生産者や酪農家はいないようですが、今日のような対話集会という場では経営の中には入って行けないと思います。生産者も応援したいと思っています。ぜひ考えて欲しいです。
消費者の方々に伝えたいこと
食べものは、買った後はある程度消費者個人の責任になるはずですから、メーカーに頼るばかりじゃ過剰包装にもなってしまうと思います。おいしく保存するためにはどうしたらいいのか考えて、それなら少量のサイズ、あるいは小さいサイズをつくってもらおうという程度の要求ならいいと思います。全てメーカーに押し付けるのはどうかなと思います。
生産者に対しては本当にさまざまな要求があるけれど、はっきり言って減農薬でならなんとかできても、無農薬は無理だと思います。「虫がついているからこれはいいものだよ」と言って、昔は買ってくれたけれど今はそうではないです。やっぱり見かけがいいのが売れるから、農家の人たちもそういうものをつくらなくてはいけない。
写真無登録農薬の問題がありました。使ってはいけない農薬を使うのは当然悪いけれど、農家も生きていくためにはどうしてもギリギリのところで(農薬を)使わざるを得ないという時が確かにあります。消費者の声と感覚にばかり動かされていてはやってはいけないと思います。どちらも両方から、お互いに思いやる気持ちがないと、なんでもかんでも要求ではなくて、生きていくためにお互い少し理解していかないといけないと思います。


― 対話会に参加した雪印社員の感想 ―
営業という自分の立場で商品を見る場合「味やパッケージはどうか?」「売れそうか?」など商品自体のことは考えても、それをつくる原料のこと、生産者の皆さまのことを深く考えたことはありませんでした。
二度の事件の時、返品されてくる商品を廃棄のために仕分けしながら、初めてお客様や生産者の方々に本当に申し訳無いという気持ちになったのを憶えています。
今回参加して痛切に感じたこと「雪印の事件、口蹄疫、BSEと予期せぬ事態に見舞われ、将来に対する不安を感じながら今も酪農を続けている」とか「乳のイメージアップのためにも応援しています」という酪農家の皆さまの言葉に、私たちのこれからの行動に対する責任の重さを改めて思い直しました。
酪農家の見学にしても対話会にしても、時間の制限があり、全員の話が聞けなかったり思うように質問ができなかったりして、少し残念なところもありました。
その中でもお会いした皆さまの仕事に対する熱意とこだわりを感じました。
自分自身がいくつかの質問に答えることができなかったりして、知識不足を感じ、反省しました。
私たちが扱う製品は乳を基本としてつくられるもので、その乳は生きた動物からしか得ることはできません。その乳を出荷するまでの酪農家の方々の日々のたゆまぬ奮闘を痛感し、自分たちの扱う商品に愛着が膨らむと同時に、自分達の業務に対する使命感を感じました。
生産者の方々はものづくりへのこだわりを強く持っており、「私たちはいいものをつくっている。だからみんな見て!」という意識が伝わってきました。その意識が力強さとなって表れているように感じ、営業担当として製品への愛情が基本であると実感しました。同時に、雪印乳業の社員全員が営業の精神を持つべきだと思いました。利益追求という意味でなく、常にお客様に胸を張れる商品・人間・企業づくりをすべきという意味です。
生産しているものの違いこそあれ、愛情と厳しさを持って一生懸命生産をされていることが実感できました。私たちメーカーは、原料や生産に対し、自分の子供を育てるような愛情と厳しさを常に感じていることが業務の充実に必要で、それが見につけば各人の業務が自ずと実り豊かになり、ひいては会社全体の利益につながるのではないかと感じました。
また、食べる側とつくる側の距離が離れているというのは、日本社会全体に帰属する問題だと思います。「箱を開ければ自分の責任」とおっしゃられた方がいらっしゃいましたが、消費者の義務というものを明確にする議論が交わされる必要も感じました。
対話会に向かう車中だったと思うのですが「昔は“東京では今こんなことがブーム”という話が聞こえてきて半年から一年後に、自分たちの周りにその流れが来たので、東京を意識しながらやって来たけれど、今は瞬きしているうちに状況が変わるような時代。少し先を見た時に、もっと危機感を持たなくては!といつも感じています」と話しておられました。一日一日を自分たちの手で生きている、その姿を写す言葉のように感じられてとても印象に残ったと同時に、自分が恥かしく思えました。
食べる側とつくる側の距離の話がありましたが、離れてしまったと口にするとそう感じてしまうようにも思います。たくさんの生産者の方々が、知って欲しい・伝えたいと思っていらっしゃると思います。だからその周りで、ただ受け取るのではなく、もっと自分の命に興味を持ってその意味を知ろうとしなければならないと思いました。

出席者
生産者及び関係者の方々
村上 浮子さん (みかん)
富田 裕美さんご夫妻(酪農)
和田 るみ子さん(酪農)
米溝 聡子さん (酪農)
中村 清隆さん (酪農)
和田 輝幸さん (酪農)
田嶌 妙子さん (JA)
梅本 清子さん (JA)
広瀬 ハルエさん(JA)
豊田 スイ子さん(果樹・野菜・米)
中村 昭子さん (野菜)
瀬上 カチ子さん(花)
緒方 妙子さん (JA)
上村 忍さん  (みかん)
星田 まり子さん(い草)
猪口 正子さん (消費者)
上村 千明さん (みかん)
井沢 あき子さん(みかん)
坂口 りえ子さん(みかん)
川上 和子さん (みかん)
入江 きょう子さん(消費者)
志賀 みち子さん(JA)
吉村 悦子さん (酪農)
甲斐 イツ子さん(酪農・JA)

雪印社員
水野 裕明 (九州統括支店)
加藤 光一郎(九州統括支店)
光武 大介 (九州統括支店)
松本 幹治 (パブリックコミュニケーション室)
新屋敷 久美子(パブリックコミュニケーション室)
当ホームページへの報告が遅れ、大変申し訳ございませんでした。
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