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酪農業への思い |
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自分の中では、野菜を作ったり牛乳を出荷したりするときに、なるべくなら細菌を少なくしよう、農薬を使わなくしよう、大きく考えれば地球全体のことなんだから、自分達の未来を守るためなんだから、子供のためなんだから、という思いは常々持っています。 |
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酪農というのは経営もしっかりしていて、後継者が育つ優良企業の典型だったんですよ。だけど実際には、優秀な酪農家でさえも、後継者を酪農家にさせられない事情というのがあります。かなり乳価が下がってきて、餌もなかなか自分の畑での餌では間に合わなくて輸入ということになって、餌の値段でかなり生産コストも違ってきますから、その中で牛乳の味も違ってきますんで、いろいろと自分のところなりの餌のやり方とか工夫して、それで苦労しています。出荷するときに、乳質が何%以上とか、10日に一度の乳質検査で数字を出しながら、寒い中をやっている。そういうことを雪印に知ってもらいたい。 |
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せっかく雪印社員とお話するので、言うことをまとめておこうと思ったんですが、朝晩の搾乳と家族のことと色々やっていて、結局、毎日のことに追われて、まとめる暇もなく、ただ夢中で来てしまいました。何かたいそうなことが言えればいいのですけど・・ひたすら毎日仕事に追われて、あとは10日に一度の試験にクリアするだけで、気持ちのやり場がないものだから、何も出来ないんです。気持ちの余裕があれば、自分の頭でよく整理できて良いんですけど、組合の役員会に皆さんと集まったときにお話するだけというのが現状です。もう少しゆとりがほしいです。 |
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やはりアメリカの真似ばかりして、ホルスタインしか飼ってないとか、必然的に乳成分は高いものを出す品種を多く飼ってる。そういう傾向はあります。ですからあまりアメリカの真似をしすぎたということが、今の日本の酪農の大きな弱点になってるのかなという反省はあります。 |
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酪農体験研修について |
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(雪印社員の酪農研修の計画に関して)余裕があるときじゃないと受け入れできないな、という感覚です。でも実際は、本当に忙しい時に“助っ人”になるような人に来ていただけるのが一番助かるわけです。一回研修を受けた人が“助っ人”で来てくれるような、何回もホームステイしてくれるような、そういう方向性があれば、研修も生きてくるんじゃないかと思います。 |
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外で草をよく食べた牛が出す乳と、与えられた餌を食べた牛が出す乳では味が違うんですよね。だから、酪農体験で「誰さん家の牛乳が飲みたい」というのが分かってもらえると思います。一頭一頭、牛の乳の味が違うのを感じてもらって、それが製品化されていく過程で自分がどういうところで何ができるかっていうのを体験の中で考えてもらうのも良いんじゃないかと思う。雪印も大きくなった故に見えない部分が出てきたというのを反省してもらいたい。 |
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研修といえば、ヘルパーの実習生を順番に受け入れることになっていて、まさかそうとは言えないんですけど邪魔だと思うときもあります。ひとりで駆け回ったほうが早いときもあります。(実習生は)お客さんじゃないし、だからと言ってヘルパーさんでもないし、この人にどんな風に接すればいいのかな、と。仕事をするときには牛に対すること以外に気を遣いたくないというのが正直なところです。来てくれる人が女の人だったら良いんだけど、男の人だと私は正直一緒にやりたくない。相手(牛)は生きてるものだし、きれいごとでは済まされないことがいっぱいある。 |
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受け入れる方も大変だけど、人間関係が豊かになるから。相手から頂くものはいっぱいあるんですよね。だからこっちからあげるよりも頂いていることのほうが多いかもと思うんですよね。 |
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消費者の方々に伝えたいこと |
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今、一般の人たちも農家の内情を知りつつありますから、雪印もただ受け身になっているのじゃなくて、消費者を教育していったらどうですか。例えば値段が高くても安全なものを欲しいという人が増えている。そういう流れにうまく乗っていくというか、自分達は、値段は高いんですがそれに見合うこんなことをしていますというのを消費者に伝える。採算ラインとしては合わないなら、全部でなく、一部でも、少しでもやっていくと、消費者に受け入れられるんじゃないかと思う。 |
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いま子供を育ててる人とかね、体を形成しなければいけない年齢の子供を持つ親の人達の懐が厳しいですよね。だから良い物を買えないんですよね。だから私達は、「良いものを食べさせて良い体を作ってもらいたい」「良い物を食べて暮らしていける場所にいるからこそ、消費者の方たちに良い物を食べてもらいたい」というのが伝えたいんだけれども、その辺のところは自分達の仕事じゃ無理というか、なかなかできないところだから、メーカーに是非やってもらいたい。 |
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雪印へのご意見 |
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今まで、どこに牛乳出してるの、と聞かれて、ずっと雪印って言いつづけてきた。それが、今では引け目を感じて、雪印って言葉を出すのが辛かったです。 |
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前に組合長さんの家にお伺いしたときに、雪印の創業の精神という『健土健民』の書を見せていただいた。3月に「田舎のヒロインわくわくネットワーク」全国集会の時、前の西社長も、原点に帰って、ということでおっしゃっていたんで、私は出来る限りお手伝いしたいと思っています。牛乳の場合は、「この地域で搾ったものが飲みたい」「誰々の牧場の牛乳を飲みたい」と思っても飲めないんですよね。周辺にある他の牧場の牛乳と混ざっちゃうから。結局、この地域で搾った牛乳は茨城じゃなくて実際には他地域の工場の方へ運んでいるという話を聞いたりすると、すごくさびしい想いをしてます。やはり、「地元で生産されるものは、地元で製品化してもらいたい」「作った人の顔が見えるようにして欲しい」というのが、生産者としての思いです。チーズも、あんまり大きいのは良いとこが見えないですから、その辺のところを考えて、地元を大事に、例えば中標津町で搾った牛乳は中標津町でチーズにするとか、そういう形の、何か、名前に地名とか生産者の香りをつけたものをやってくださったらな、といつも思っています。 |
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うちでは主人が雪印のヨーグルトが大好きなんですが、私が雪印にこだわると思っていなかったので他のヨーグルトを買ってきたら、「何で雪印を買わないんだ」と怒られまして、「他のだっておいしいし安かったのよ」と言うと、主人に「うちは雪印に牛乳を出しているんだ。生産者が雪印を裏切るのか」といわれました。こういう残念な事件は起きましたが、今雪印はスタートラインに立ったと思うので、頑張ってください。 |
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皆さん方に対しては、私から言わせれば、遅まきだったなという部分はありますけれども、改めてこういう機会を作りながら原点に立ち返りながら、これからも皆さんと力を合わせて頑張っていただければ幸いだと思いますし、引き続いて今後とも酪農の発展に、今後の活動に、期待をしていますので宜しくお願いします。 |