雪印乳業株式会社
雪印乳業株式会社
生産者の方々との対話会
第九回生産者の方々との対話会(12月4日滋賀県大津市及び永源寺町にて)
写真2002年12月4日、滋賀県大津市及び永源寺町で生産者の方々との対話会を実施しました。午前中は、生産者の方々の窓口役を引き受けて下さった大津市伊香立の岩田さんの経営される「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」に伺いました。




■ブルーベリーフィールズ紀伊國屋さんで伺ったこと
20年前、関西ではブルーベリーは殆どありませんでした。まだ誰もしていなくて価値があること、ということでブルーベリー栽培を始めました。
ブルーベリージャムは製造にとことんこだわっています。20年間無農薬栽培のブルーベリーで、水は一切加えず作っています。一度瓶詰してからの殺菌はしていません。だから、自信を持って食べていける価格設定を出来るし、お客様も値段に納得してリピートして下さいます。
企業理念は『紀伊國屋は農業の全ての夢と可能性をクリエイトしお客様に伝えそしてリードするものです。私達ここで働くものは食の重要性をふまえ、個人がそれぞれに持つ最大の誠実さをもって生産、製造、販売そして経営にあたります。紀伊國屋はこの豊かな自然の中で常に感動を呼ぶ地球上で一番笑顔輝く場所です。』です。個人個人が「まあいいや」でなく、個々の能力や誠実さを最大に発揮することが重要です。
写真『その味、香、コクまで最高においしいイメージ』を各業務の最終目標にしています。決して数字ではありません。それがお客様の感動につながります。農場の業務の人も最終的にこのイメージを作っているということを意識するようにしています。だからレストランのお客様へも必ずご挨拶をしているんです。

写真■対話会
 午後は岩田さんの車で永源寺町に移動し、永源寺町和南の池田さんご夫妻の経営される牧場に伺い、併設のジェラートショップをお借りし、生産者の方々との対話会を実施しました。対話会には池田さんご夫妻、岩田さんをはじめとして、酪農家の方々、野菜農家の方々など生産者の皆さま9名にご協力いただきました。また、JAの方など関係各位にもご参加いただき幅広い観点からのお話を伺いました。雪印側は関西チーズ工場、人事部等4人が参加しました。
 ジェラートショップの店内に14名が一輪となり、2時間半以上にわたって対話が行なわれました。始めに自己紹介のあと、雪印社員から食中毒事件当時感じたことを述べましたが、生産者の方々からは「雪印はまだ生産者を忘れている」という厳しいご発言があり、社員は今回の生産者との対話の意味を再認識する必要があると痛感しました。そのあと、生産者の方々からは、様々なモノ作りへのこだわりや、農と消費生活の矛盾、消費者教育のあり方、今後の雪印へのご意見などを頂戴しました。
 最後に岩田さんから「今後は、このような生産者とメーカーの対話会に消費者も加わり、一体となって話し合いをすることが第一歩」という言葉をいただき、会を終了しました。
 対話会にご協力ご出席いただきました皆さまに厚く御礼申し上げます。写真










生産者の方々からのご意見、参加した社員の感想は以下のとおりです。


【ご意見・ご提言】
雪印のお三方のお話を聞いていて「もう皆帰ってもらおう」と思った。言い訳を聞くために、来たんじゃないし。皆さんは自分の会社のこととお客様のことしか考えておられない。生産者のことを一言も言われなかった。お一人だけが、生産者の方と付き合った経験があったから「生産者の方が一生懸命したのを・・・」って言ってくれて、それがなかったら私「もう帰れーっ」て言うところでしたよ。「自分の会社がどんな過ちを犯した」「消費者の方が待っていてくれるのに出せない」そんな話聞きたくないですよ。一生懸命下向いてモノを作った者ばかりが寄って、それがあるから雪印があって、それを雪印がおいしく加工して消費者に渡している。その基本をまだやっぱり三人の方は忘れておられると思いませんでした?会社の言い訳なんか聞いてもしょうがありません。
雪印の小売店業者さんもいろいろ困ってるとも聞きましたけど、このしわ寄せなのか分からないけどなんで末端価格が上がっているのに生産者が作ったもの・一生懸命作ったものが何銭しか上がらないのでしょうかね。餌代とかもすごく上がってきていて、生産者は大変なんですよね。すごく腹が立ちます。
野菜とか果樹とかは、頑張り次第で結構生産者のこだわりがそのまま消費者に伝わる場合もあると思う。でも、牛乳だけはできないんじゃないかなと思いますね。施設とかいろいろ掛かるし。他のもの(米や野菜)は、自分が納得できるものを作って納得する人にお届けする場所を農協が設置してくれたりしていっぱい売る場所が出来てきて、スーパーさんとかも“地場産業の〇〇”とちゃんと説明して置けるようになってきている。でも牛乳だけは日持ちするように、と。私が一度保健所に行った時に、なぜ牛乳は色々厳しいこと言われるのかと聞いたら、「マッカーサーが来たときに自分が食べるものだけは厳しく決めて、自分の食べないものは適当に決めたから、食肉や牛乳は厳しい」と言われた。日持ちがしない牛乳は、加工施設にも、プラント持っても一億ではとてもできない。
生産者とメーカーと消費者っていうのは、みんなそれぞれ一生懸命頑張っているんだけれども、どこかで利益は得なければならないわけですよね。その道理は分かるけれども、もうちょっと透明性を持たせて、消費者の方に教育を受けてもらって、生産者にももうちょっとゆとりをいただけるようにしてっていう思いです。牛乳だけじゃなくてすべての生産者に。
メーカーの仕事っていうのは、生産者から買って加工して消費者に売る、それだけじゃないと思う。消費者の方を教育していくというのが大きな仕事だと思いますよ。ただ買ってくれるものを売るというと、「日持ちのするものを望んでいるから添加物入れる」のではなくて、もちろん企業だから、売って利益を出して税金を納めて、それが企業の道ですけれども、やっぱり消費者をどんどん教育していかなきゃいけないと思う。今、生産者は教育できない。間に誰かが入っているから。私としては、「消費者の人とお話が出来る」「これはこうだから」って事実を教えられる場が欲しいけど、誰が教育するんだって言ったら、売ってくれてるメーカーさんが「食べ物はこういうものだ」という教育をこれからしてくれなかったら、外国の農薬漬けの野菜を加工して平気で売ることになる。おおかた食べちゃってから、この野菜は農薬漬けでしたって言われても、吐き出すわけにもいかないし。
生産者があって、メーカーは段階なわけですよね、最終的に消費者に伝える段階がいっぱいあるわけですよね、小売店を含めて。昔は、自分が作っていたものを出したらそれでよかったけど、今は段階がいっぱいあるから、みんなが消費者に伝わるまでに努力して消費者までのパイプを太くしっかり結んでおかないと、途中で下手したら、全部の作業がだめになる。生産者だけが頑張るといっても、売ってもらうのはメーカーや小売店ということになると、そこが下手したらダメなわけですよね。逆にメーカーが一生懸命頑張っても、生産者が良いものを作らなければダメで、消費者が分からなくてもダメなわけですよね。今はもしかしたら少しずつみんなが思っているけど反映できないという状況になっていると思うわけですよね。今ちょうど良い具合に過渡期なのかな、と思ったりするんです。やっぱり個人個人が考えなきゃいけない。一方通行の情報じゃなくてみんなが考えていく、生産者も言っていかなきゃいけないし、メーカーも言っていかなきゃいけないし、消費者も「こんなことを聞きたい」と思っていることを言っていくことが大切。「そんなの言えない」ってどこかで諦めてしまうとか、「何度言っても変わらない」とか、「あなた達が言ってくれないと」とか、だんだん他力本願になってきている。だからこそ、そうじゃない、ちゃんと声は反映されるんだ、っていうシステムを作っていかなきゃいけないんじゃないかなとすごく思う部分があるんです。こういう会があったら良いなと思っています。
雪印にとっては一番良い時期を迎えているんだと思います。こんなふうにして、全国で対話をして地を固めていくことは、今一番大事な情報をこんなに簡単に手に入れられる方法は他にはないわけですよね。これをもう少し、例えば消費者をまじえるとか、進めていく。それは大きな会場ではだめ。これくらいの規模で、消費者を入れる、消費者も語ってくれるという場が必要だと思う。社員が情熱を持って全国を回ることが、その中で積み重ねられていくものが大変な財産だと思う。これを積み重ねていったら他の企業とは違うものを、雪印独自のものを持つひとつのチャンスだと思う。それをチャンスにできるか否かは雪印自体の問題だと思う。
“いつも家の冷蔵庫に牛乳がある”ということよりも、“大切な牛乳をしっかり飲もうね”という家族を作れるような、社会すべてを啓蒙していく役割を担っている企業だということ。雪印は、食品を扱うからには、そういう部分も自分達の責任として企業としての使命というものをもう一度きちんと認識をしていただきたい。このことをもって、より皆が情熱的に真剣に取り組まれたら、本当によそのメーカーとは違う会社が出来ていくのではないかなと思いますし、そうあって欲しいなと思います。
こういう会に消費者の方がいらしたら良いと思いますよ。それぞれに違う思いがあっていろいろな人がいて、安ければ良い人と高くても良いものが欲しい人といろいろいらっしゃるから、こんなところでこんな議論を戦わせているということがすごくインパクトがあることだと思うので、消費者が入ると、どちらにとっても驚くことがあるだろうし、そういうことから何かが伝わると思う。別に教育といっても学校でも教えない。子供からおばあちゃんまで誰が教育するのかといっても教育する人もいないし教育する場もない。一方的な流れのテレビのニュースしか情報がないんですよね。教育は、昔は家の中にあったけど家で教える人が今はもういないですから、親も教えられなくなってきている。その中で、気づいた人がどこかで誰かが補わないと、もう教わる場がないんです。何が良いのかすら分からない。「野菜を洗うのが面倒」「果物が切れない」って果樹の需要がどんどん減っていて、「リンゴが剥けない」「家でナイフが危ない」と言って小さい頃から鉛筆を削らないし、そうするといつまで経っても包丁がうまく使えないからリンゴが剥けない。こたつの上でみかんを食べるのも、剥くのが面倒臭いというお嬢さんがいる。ましてやベタベタするから嫌だと言って食べない。あんなリンゴほどおいしい果樹がある国はないのに、果樹の需要がどんどん減っている。ブドウは袋を出すのが面倒臭いという時代ですので、すべてが面倒臭い。体を動かすのが面倒でもちろん料理もしない。そういう風にどんどんなっているのはなぜかというと、家でしていることが当たり前だから、家が役割を放棄してるから、誰かが言わないと。


― 対話会に参加した雪印社員の感想 ―
物作りの大切さ、本物の価値を正確に伝えていくのがメーカーの役割・責任であるとのメッセージをいただきました。
「人間は自然から恵(めぐみ)をいただいている」という視点や「食の安全・安心」の視点、から伝承教育の重要性や生産手段のあり方など、ご自分の生き方をベースにした実のある話を伺いました。
「地主の一足、最良の施肥」という言葉がありますが、現場の土のにおい、そこにいる人たちから感じるもの、大切なものを身体に染み込ませてきました。
表面的な情報や映像でなく、においや伝わるものを現場で頂いてきました。
こうした対話集会の継続実施を、参加者として社内に強く主張したいと思います。
生産者の方から「人生とは生き続けること、そのときだけは省いてくれといってもどうしようもない」との身の引き締まる重く厳しい言葉がありました。
個人としてしっかり受け止めたい。個人個人が自分の思考、感情、行動に責任を持つことが「今、ここで」の姿勢として求められていることを再確認した。わくわくネットワークの皆さまに感謝申し上げます。
プロセスチーズの製造工場に勤務する者にとって、普段酪農家の方々の声を直接聞く機会は殆どない。しかし、今回の対話会に出席し、乳業メーカーに働く者にとって酪農家の声は消費者の声とともに常に拝聴すべきものである事を痛感した。
特に今回の生産者の方々は、有機農業を実践されており、一人ひとりが「安全で健康に貢献する食品作り」に徹しておられ、酪農への想いと現実とのギャップに悩みながらも酪農に向き合い、真剣に取り組まれているという印象を受けた。
酪農家の熱意と想いがメーカーに伝わらないもどかしさがあり、また「雪印食中毒事件以降、食の安全性の問題が発生するたびに、いつも生産者が馬鹿を見る」との生産者の方の意見には、当事者の一人として言葉がなかった。さらに「同じ地球に生きている人間、引いては消費者、メーカー、生産者が、おいしく、安全で健康に役立つ食品のことをどうしてもっと考えないのか」という指摘は、これからの雪印にとっても、重要な課題であると改めて痛感した。
少人数で生産者のお宅にお邪魔して開催させていただく対話会での発言は、すべて本音であることから、どんな小さなご意見でも、新生雪印の糧とさせていただき、メーカーとしての責任(生産者の想いに付加価値を加え消費者にお届けする)を果たすべきであると感じた。私自身工場の従業員として忘れかけていた、大事な精神を教えて頂いた対話会であった。今回の対話会は、酪農家の雪印に対する想いを教えて頂く貴重な場であり、こういう機会をもっと多くの従業員に経験してもらいたいと感じた。

出席者
生産者及び関係者の方々
池田 義昭さん・喜久子さん夫妻(酪農、ジェラート)
谷村  晃さん・扶美子さん夫妻(酪農)
岩田 康子さん (ブルーベリージャム、レストラン))
大辻 須恵さん (野菜)
西川 とし子さん(野菜)
南  紀与春さん(米、果樹)
中川 かおりさん(JAグリーン近江)

雪印社員
武村 耕治(関西チーズ工場)
山本  洋(人事部)
松本 幹治(CS推進室)
下村 善計(社長室)
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