雪印乳業株式会社
雪印乳業株式会社
生産者の方々との対話会
第四回生産者の方々との対話会(5月29日 福井県三国町おけら牧場)
写真2002年5月29日、福井県三国町にある「おけら牧場」において、第4回目の生産者の方々と雪印社員との対話会を行ないました。
今回会場となったおけら牧場は【田舎のヒロインわくわくネットワーク】の代表を務められている山崎洋子さんご夫妻が経営されている牧場です。当初「生産者との対話会」の取組みを始めるにあたっては、山崎さんご夫妻にご相談させていただきました。そして最終的に、全国の雪印社員とわくわくネットワークのメンバーの方々と対話会を行なうことで、社員が少しでも生産の現場を知り、生産者のことを知り、そこから学び、今雪印が行なうべき課題を見出し変革につなげるということを目的にスタートしました。


写真今回の対話会は、山崎さんのご自宅に隣接するログハウスにおいて、山崎さんご夫妻ほか田舎のヒロインわくわくネットワークメンバーの方々、福井県庁の畜産課の方、近隣の消費者の方など12名に対し、当社社員8名の総勢20名で大きなテーブルを囲んで行なわれました。山崎さんが雪印100株運動を起こした経緯や雪印へ期待すること、日本の食の将来に対する不安、山崎さんのヨーロッパ酪農視察のお話、物づくりの哲学など、視野の広いお話をたくさんお聞かせいただきました。


写真酪農家の方々は手間暇かけて搾ったミルクを出来るだけ自然に近い形でそのおいしさを消費者にお届けしたいと思っています。「酪農が前身の雪印だから」「事件を起こした雪印だから」こそ、そんな酪農家の方々の思いを形にできるかもしれない、そのような期待も込めてご協力くださっている方々がわくわくネットワークの中には多くいらっしゃいます。しかし、当社の再建計画の中で牛乳等の市乳部門を切り離し、他社との提携を発表したことを受け、山崎さんも含めて全国のわくわくネットワークの方々の間では「もはや雪印に協力する意味がないのではないか」という声が上がってきているのも事実です。

写真そんな中で山崎さんは参加した社員に次のように話してくださいました。「会社がこうだからではなく、自分は雪印をこういう会社にしたいからこういう製品を作りたい。だから今会社に勤めているのだというふうに意識の転換を図って欲しい。社員一人一人が『自分が会社を作る』という意識にならないと雪印は再生しないと思う。そのために、我々生産者と話して欲しいし生産現場を知って欲しいし、消費者の声も聞いて欲しいし自らも消費者であって欲しい。農業を理解するということでなく、壁にぶち当たっている時に今日のような対話会にそれぞれが「個人」として来て、生産者と出会って付き合ってみたら、今まで見えなかった出口が見えてくるかもしれない。そのきっかけにこの会がなればいいと思っています」

今後次々と会社再建の中で企業体そのものは大きく変化していかざるを得ませんが、雪印が果たしてきた価値、持っていかなければいけないもの、なくしてはいけないものは何か、それぞれの立場で自らが考え、行動していきたいと考えます。

山崎さんご夫妻をはじめとする参加してくださった方々から多くの厳しいご意見・ご提言をいただきました。以下がその主な内容と参加した社員の感想です。今後参加した社員でアフターミーティングを行い、具体的な行動につなげていきます。



【わくわくネットワークの方々からのご意見】
低温殺菌牛乳に会社として取組んで欲しい。
(理由) 競争が厳しくなる中で他社との差別化を図るためにも取組むべき。
  低温殺菌牛乳は良質な乳を一番旬のときに短い期限の中で飲ませるために製造する側も注意を払うので実は一番安全。
  消費者に迎合した商品を作るのではなく、食品メーカーとしてこれは体に絶対必要だとか、これが本来の味だというものを伝えるような商品を作るべき。
  子供達に本当の牛乳の味を教えて欲しい。
牛乳は原料を全て国産の牛乳を使うため、農家にとってはありがたい分野であり、潰すわけにはいかない。悪いところは改め、もっと勉強をして立ち直って欲しい。
狂牛病により牛肉の信頼を取り戻すのに非常に苦労している。食の信頼はそう簡単には構築できるものではない。粘り強く信頼回復に取組んで欲しい。
会社再建のために赤字の市乳部門を切り離すのはどうか。やはり一番の基本は牛乳であり、命を育む母乳の次にあるような大事なものである。採算性や品質管理など手数がかかるが、これが雪印の生きる道であり、これを捨てたら雪印のアイデンティティーがなくなるのではないか。
農家としては市乳部門は一番大きな部門なので、この部門がなくなる雪印を果たして今後どう見ていったらいいのか大きな問題である。また、何年後かに市乳部門を取り戻して雪印として再生するつもりなのかどうか。
自分の物差しを持ちなさい。会社の物差しに自分を合わせるのではなく、自分の物差しを持って上司をはかり、会社をはかる。そしてその物差しは今をはかる物差しと何年後かをはかる物差しであるべき。そうやって自分の価値判断を一人一人が持つことで会社組織が変わっていく。
消費者と直接接する機会がある社員は、徹底的に教育するべき。工場の開放デーなどはとても良い機会であり、きちんと消費者の質問に答えられる人が現場にいるべき。
消費者教育を誰かがやらなければいけない。お金にならないから誰もやらない。だから消費者は結局安くておいしそうで手軽なものへと行ってしまう。
自由化で輸入されたものとオーガニックで作った穀物の値段が一緒で、農家が成り立たない状況にある。雪印には日本版オーガニックを作って欲しい(放牧して育てた牛の価値を高める)
雪印が今ある牧場とタイアップして育てて欲しい。これからは生産者を巻き込んで、生産者も雪印とやっていることがプライドになるようになれば、より質の高いものが作れる。お互い競争し合いながら共にレベルアップを図っていくことが理想。


― 対話会に出席して 雪印社員の感想 ―
自分自身も農家に生まれ、少しではありますが農家の気持ちがわかると考えていた。しかし入社して十余年、乳業メーカーに勤めながら酪農家・生産者視点でものを考えるということは全くなかった。「(売っている)牛乳が工業製品に見える」と言われ、今までの自分は工業製品の販売者に過ぎなかったと感じた。「米・麦・牛乳=人間の3大食品、だから安心して飲める牛乳を」「毎日の命を維持するもの=牛乳」というシンプルなのに我々がなかなか感じることのできない言葉を聞き、生産者との距離をもっともっと縮めなければいけないと痛感した。
低温殺菌牛乳を例にかなり論じられたが、私自身セールスとして売り場に出て、これまで「低温殺菌牛乳」を見てきて、その販売力を考えると市場の定着性には疑問をもっていた。またメーカーとしてその生産性の低さは十分認識していた。しかし生産者の方の「語れる牛乳、おいしさが原点、シンプルだけど本物の味を=低温殺菌牛乳」との低温殺菌牛乳に執着する裏には「おいしさ」があり、食品メーカーが当然追求するべきことであり、「企業体質」が問われながらもやはり「おいしさ」が信頼回復に大きく前進するきっかけになると感じた。
今回の対話会で一番印象に残ったのは、「社員一人一人が雪印を作るんだという意識を持って欲しい」という言葉だった。現在の自分自身と照らし合わせると恥ずかしい気持ちになった。食中毒事件後はそのような気持ちを持って仕事に向かっていたはずなのに、いつのまにかその気持ちが薄れ、雪印食品の事件以後は日々の仕事をこなすだけの気力がなくなって来ている自分の心の中を見透かされたような気がした。そういう意味でも今回参加いただいた生産者の方々のご意見は当社の問題点・改善点を率直に指摘していただき、とても新鮮に感じた。(なかなかそこまで指摘してくださる社外の方はいないので)
当社の再建策については(市乳部門分離)辛口のコメントをいただいたが、牛乳が当社の事業全ての基本だということは自分自身も同様に感じており、この先また一緒になれるように自分たちの力で頑張らなければというパワーをもらった気がした。
当社としてはそれが低温殺菌牛乳になるかは別として、他社との差別化を図る商品の開発が必要だと感じた。
今回は自分が全く知らなかった生産現場の方の話を聞くことができた。出来れば実際の現場に立ちたいと思う。商品は生産→流通→購買と流れている。それぞれの仕組みを深く知ることでより商品に興味が湧き、また好きになることができると思う。営業は「商品を好きになること」が成功する大前提だと思うので、今後もっと生産現場を知りたいと思う。また逆に生産者の方々にも自分達の商談などに立ち会ってもらう機会がもてればと思う。

出席者
生産者の方々
山ア 洋子さん
山ア 一之さん
山ア 美峰さん
能登 裕子さん
藤岡 絹恵さん
武井 晴美さん
田中 千賀子さん
乗京 悦子さん
近藤 英子さん
中島 タミさん
稲沢 宗一郎さん
高橋 節子さん

雪印社員
大谷 泰広(中部統括支店・業務製品課)
横山 秀夫(名古屋支店・市乳営業促進課)
井上 秀樹(名古屋支店・乳食品課)
諸戸 秀行(中部統括支店・アイスクリーム課)
土岡 英明(経営企画室)
鹿毛 康司(経営企画室)
菅谷 正行(CS推進室)
原 恭子(経営企画室)
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